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映画愛映画の最高峰! イングロリアス・バスターズ

完全ネタバレです!
タラちゃん史上最高に映画愛に満ち溢れた、映画愛映画の最高峰!
イングロリアス・バスターズ!

基本ネタは、エルンスト・ルビッチ監督のスクリューボール・コメディ
『生きるべきか死ぬべきか』
生きるべきか死ぬべきか
ルビッチはユダヤ人であるがゆえに、ナチの迫害から逃れアメリカに亡命し、ハリウッドでコメディのプロトタイプを作り、ビリーワイルダーの師匠でもあります(ワイルダーもハリウッドへ亡命)。
この『生きるべきか死ぬべきか』とは、主演のキャロル・ロンバードとジャック・ベニー夫妻のトゥール一座は『ハムレット』の舞台をしていました。
しかしナチのポーランド侵攻の時代にスパイ狩りの対策として、一座全員がナチになりすまし一件落着。
と思いきや、ヒトラーがトゥール一座の舞台を見に来るとの情報が入り、このすきを狙って一座全員ポーランドから脱出する計画を立てる…

といった、スクリューボール・コメディでコメディタッチたっぷりの『イングロリアス・バスターズ』の軽快で絶妙なテンポやマシンガントーク、プレミア大作戦の元ネタにもなった映画であります。
タラちゃんは一番参考にしたのは、ルビッチのこの作品だと語っております。

エンツォ・G・カステラッリ監督のグラインドハウス:マカロニ・コンバット『地獄のバスターズ』
地獄のバスターズ

イタリアン・エクスプロイテーション監督によるロバート・アルドリッチの『特攻大作戦』フォロワー。
スローモーションの多用から、イタリアのペキンパーとも呼ばれたカステラッリ
「亜流とバカにされる私同様エクスプロイテーション監督たちの低予算映画が外貨を稼ぎ、チネチッタでフェリーニやベルトリッチが作る芸術作品へと還元されていた事実を忘れないで欲しい」
V2ロケットを破壊する為に、連合軍の特殊部隊がフランスに送られたはいいけど、アメリカのならず物囚人兵たちが間違って特殊部隊を敵だと思い殺してしまい、特殊部隊の作戦の代わりをするというお話。

当初タラちゃんは、この作品のリメイクをすると公言していたのですが、10年暖めた脚本はいつの間にかリメイクではなく、タイトルのスペルを1文字増やして完全オリジナルとしてタラちゃん監督脚本、タラちゃん史上かつてないレベルの映画愛映画『イングロリアス・バスターズ』として脱稿しました。





イングロリアス・バスターズ
(クエンティン・タランティーノ2009)



≪オープニング≫

何故かヌーヴェルバーグの匂いを感じさせる、タラちゃん直筆のタイトルバック。
かかるのはエンニオ・モリコーネにも影響を与えた、ディミトリー・ティオムキン作曲の『遥かなるアラモ』のテーマです。
これはジョン・ウェインの初監督作品『アラモ』に使われたスコアであります。
アラモ


≪第1章≫
ONCE UPON A TIME IN NAZI OCCUPID FRANCE
  ~その昔、ナチ占領下のフランスで~



このONCE UPON A TIME IN はタラちゃんの一番尊敬するセルジオ・レオーネ監督のワンス・アポン・ア・タイム三部作に対するオマージュです。

農夫が薪を割り顔を洗うシーンは、モンテ・ヘルマン監督のニュー・シネマ・ウェスタン『旋風の中に馬を進めろ』のオマージュと同時に、丘陵ある草原の一本道をナチがやって来ますが、これは『大脱走』
大脱走

かかる音楽は、セルジオ・ソリーマ監督のマカロニウェスタン『復讐のガンマン』から「エリーゼのために」に哀愁あるアルペジオ・ギターを絡めたモリコーネのスコア。
復讐のガンマン

クリストフ・ヴァルツ演じるハンス・ランダ大佐の役名、はフランク・クレイマー監督のグラインドハウス:マカロニ・コンバット『戦場のガンマン』でクラウス・キンスキーが演じた同役名からのオマージュであります。
戦場のガンマン

農夫がメラニー・ロラン演じるショシャナの家族をかくまっているのをランダが見抜いたシーンでは、レオーネのマカロニ・ウェスタン『ウエスタン』のゆっくりと二人の顔が超ズームアップになるカメラワークのオマージュ。
そして、ショシャナが必死で逃げるシーンでは、ドゥチッオ・テッサリ監督のマカロニ・ウェスタン『続・荒野の1ドル銀貨』からモリコーネの嵐のようなスコアが使われています。
続・荒野の1ドル銀貨


≪第2章≫
INGLOURIOUS BUSTERDS
  ~名誉なき野郎ども~



ブラピ扮するアルド・レインの役名は、アメリカのエクスプロイテーション役者アルド・レイから。
秘密部隊を前に演説しているシーンは『特攻大作戦』からで、軍服やカメラワークもまんま『特攻大作戦』(『特攻大作戦』はマカロニ・コンバットの嚆矢的作品でもあります)。
特攻大作戦

バスターズの存在をヒトラーが聞くシーンで、ヒトラーの肖像画を描いてるのはチャップリンの『独裁者』からのオマージュ。
バックではバート・レイノルズの『白熱』のテーマ、作曲はチャールズ・バーンスタインであります。
白熱

バスターズがジュリオ・クェスティ監督のマカロニ・ウェスタン『情け無用のジャンゴ』からのオマージュで、ナチ兵の頭皮剥がしをしているシーンのバックにかかるのは、セルジオ・コルブッチ監督のマカロニ・ウェスタン『豹/ジャガー』から。
勿論モリコーネでアルペジオ全開哀愁泣きメロスコアであります。
豹/ジャガー

サミュエル・L・ジャクソンのナレーションで紹介されるのが、バスターズに寝返ったヒューゴ・スティグリッツ。
この役名は、銃を持って走るゾンビで有名な、ウンベルト・レンツィ監督のグラインドハウス:ホラー『ナイトメア・シティ』に主演しているイタリアン・エクスプロイテーション役者ヒューゴ・スティグリッツからのオマージュ。
ナイトメア・シティ

登場ロゴは、クリスティーナ・リンドバーグ主演のグラインドハウス:ショックスプロイテーション『血まみれの天使』から。
血まみれの天使

その紹介音楽が、ディストーション・ギター全開のグラインドハウス:ブラックスプロイテーション、ジム・ブラウン主演の『シンジケート・キラー』のテーマ。
シンジケート・キラー

牢屋に囚われているヒューゴ。
ナチ看守兵が読んでいるシュテュルマー紙は、ユダヤ人排斥を扇状的に書いた当時のドイツで多く読まれた低俗な現代のスポーツ紙みたいなものであります。
ヒトラーは好きだったけど、幹部連中はあまりの低俗さに嫌っていたとか。

牢屋からバスターズがヒューゴを救出するシーンでは、モリコーネの『アルジェの戦い』からのスコア。

バットでナチを殴り殺すイーライ・ロス演じる「ユダヤの熊」登場シーンでは、再度『復讐のガンマン』からモリコーネのスコアが流れ、ナチ兵の額にハーケンクロイツを刻む時、覗きこむようなカメラアングルは、ウェス・クレイヴン監督のデビュー作にして、グラインドハウス:ショックスプロイテーションの最高傑作『鮮血の美学』からであります。
鮮血の美学


≪第3章 ≫
GERMAN NIGHT IN PARIS
  ~パリにおけるドイツの宵~



あれから三年後。
映画館主になったショシャナがG・W・パブスト、アーノルト・ファンク共同監督、レニ・リーフェンシュター主演の山岳映画『死の銀嶺』のタイトルを外しております。
死の銀嶺

ショシャナの身分書のエマニュエル・ミミューは、ジャック・カーディフ監督『戦争プロフェッショナル』の主演女優イヴェット・ミミューからのオマージュ。
戦争プロフェッショナル

G・W・パブスト監督は、ドイツ表現主義後の新即物主義を代表する監督です。
アメリカ人女優ルイーズ・ブルックス主演の『パンドラの箱』が世界的に評価され(タラちゃんのオールタイムベスト100にも入っております)ましたが、ナチを嫌ってハリウッドに亡命し、戦後ヒトラー暗殺未遂事件をテーマにした『7月20日の事件』を監督しております。
山岳映画は、1910年代にアーノルト・ファンク監督が発案したドイツ固有映画で、ウーファのレニ・リーフェンシュタールが主に山岳映画のスター役者でありました。
その後監督になり、ナチのプロパガンダ映画として、一番有名な『意志の勝利』を監督しその名を不動のものにしました。
しかし、敗戦後はナチに協力した事で非難をうけました。
『意志の勝利』のモンタージュ手法と線対照的で圧倒的な画面構図は大変素晴らしく、才能ある監督には間違いなかったと思います。
生まれた時代が悪かったんですね。

ショシャナの映画館で『死の銀嶺』に続いて上映作として宣伝されたのは、アンリ=ジョルジュ・クルーゾの『密告者』で場内にポスターが貼ってあります。
密告者

偶然出会った映画好きのナチ士官ダニエル・ブリュール演じるフレデリック・ツォラーと、チャップリンの『キッド』やマックス・ランデールについて会話するシーン。
マックス・ランデールとは、 1910年代にフレンチコメディを発案した監督兼役者兼製作者であります。
ある意味、時代的にも国籍的にもジョルジュ・メリエスの後継者的映画人と言ってもいいと思いますが、ランデールにはメリエスほど見世物的な胡散臭さは無く、どちらかというとチャップリンに近い芸術性&人間性であります。
このシーンではフランス人であるショシャナが、フランス人監督マックス・ランデールを賛美し、フレデリックが前述したドイツ人監督やリーフェンシュタールを賛美し、映画を通して支配する者とされる者の心理描写を巧みに描いた見事なシーンだと思います。

フレデリックはショシャナに一目惚れしたんですが、ショシャナには家族を皆殺しにされた支配者のナチとしか映らないわけで、ほんと上手い脚本であります。
タラちゃんは何故舞台を、他のナチの占領地であるポーランドなどでなく、フランスを選んだのか?との問いに対して「フランスは映画発祥の地だから」と答えています。

ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニ・ウェスタン『荒野の1ドル銀貨』のジャンニ・フェリオ作曲の、意図的なフルオケカバーが流れるカフェで、ショシャナが読んでいる本はレスリー・チャータレス作『聖者ニューヨークに現る』であります。
「聖者セイントは義賊で、依頼された復讐をする為にニューヨークに現れた…」
如何にもショシャナが好みそうな内容であります。
荒野の1ドル銀貨

このカフェで、フレデリックと再会するシーンでは、ハワード・ホークス監督の『ヨーク軍曹』が会話に出ます。
ダイアン・クルーガー演じる英国スパイであり、ウーファ女優のブリジット・フォン・ハマーシュマルクが主演しているフェイク映画ポスターがカフェの窓から見えます。
ハマーシュマルク

ショシャナがゲッベルスと食事をするシーンでは、リー・ヴァン・クリーフ主演のマカロニ・ウェスタン『風の無法者』からリズ・オルトラーニのアコギ中心の哀愁スコアが流れます。

ランダが突如として現るシーンでは、ショシャナの心臓の鼓動を象徴するかのようなオカルトホラーの名作『エンティティー/霊体』からまたまたチャールズ・バーンスタイン作曲のハンマー・ビートスコアが流れます。

ゲッベルスがリリアン・ハーヴェイと聞いて怒るシーン。
リリアン・ハーヴェイはドイツ人の父とイギリス人の母のもとにイギリスに生まれ、 ウーファにもトーキーの時代が到来して『会議は踊る』で、ハーヴェイは世界的に注目されます。
が、ユダヤ人の友達が多かったので、ゲシュタポの監視下に置かれそれを嫌がってハリウッドに亡命しますが(1917年ワイマール共和国時代、映画史的に初めての映画産業を確立したドイツのウーファ:UFA、ナチ政権下のユダヤ政策により有能な映画人がどんどんハリウッドに亡命し、皮肉な結果としてハリウッドが世界最大の映画産業になるのです)、ゲッベルスを怒らせたのは亡命前にハーヴェイが、フランス軍に慰問活動をしていた為であります(マレーネ・ディートリッヒもナチ嫌いでハリウッドへ亡命し、アメリカ軍慰問活動をしていた事で有名です)。

リリアンハーヴェイ

ショシャナと恋人マルセルが話す、35ミリ映画フィルムは自然発火する!シーンでは、またまたサミュエル・L・ジャクソンのナレーションで、まんまヒッチコックの『サボタージュ』の映像が分割画面で出ます。


≪第4章≫
OPERATIPN KINO
  ~プレミア大作戦~



冒頭からこの映画の真髄に触れる大切なシーンであります。

ミヒャエル・ファスベンダー演じるヒコックス中尉と、ロッド・テイラー演じるウィンストン・チャーチルの会話。
ヒコックス:
  「ゲッベルスは20年代の知的なユダヤ系ドイツ映画を払拭し、ハリウッド神話を崩す」
チャーチル:
  「奴はユダヤ人の得意分野を奪う気なのだろ?、例えばMGMのメイヤーと比べて」
これに対しヒコックス:
  「ゲッベルスの敵はメイヤーではなくデヴィッド・O・セルズニックだと思っています。」
セルズニックは元々メトロ・ゴールドウィン・メイヤーにいましたが、意見が合わず独立しインディペンデント・プロデューサーとして活躍しました。
裏の映画製作の天才として現代も語り継がれている偉大な映画人でありますが、あまりにも芸術性を追求するが故に、脚本や監督の演出に口出しは当たり前、役者の演技や整形などを強制するあまり(私の一番好きな女優イングリッド・バーグマンは整形を断固として拒否し、眉毛すら抜かなかったそうです)、嫌われて誰も相手をしなくなるのです。
ヒッチコックは『レベッカ』のオスカーは、セルズニックの功績だと述べていますし、『白い恐怖』や『汚名』、『風と共に去りぬ』など、 単なる娯楽映画には終わらない美しいセルズニック美学があるのです。

レベッカ
汚名

ゲッベルスも娯楽性より芸術性を重んじた映画人だった(驚くのはゲッベルス掌握時代のウーファでは、芸術映画が7割作られ残りの3割がナチ・プロパガンダ映画だった事であります)ので、金儲け主義のメイヤーは眼中に無く、同じ芸術的センスを感じていたセルズニックに対し、敵視&ライバル意識もしくは嫉妬していたのではないかと思われます。

居酒屋ルイジアナで興じられてるカードゲーム、これはルイ王朝のフランス貴族の間で流行ったゲームであり、ソフィア・コッポラ監督も『マリー・アントワネット』でオマージュしております。

ゲッベルス掌握下のウーファで最高のヒットを記録した、『大いなる愛』で主演のツァラー・レアンダーが唄った「ダフォン・ゲーテ・ディ・ヴェルト・ニヒト・ウンター」が流れ(この曲は観客全員が画面と一緒になって合唱したほど人気がありました。ある意味『ロッキー・ホラー・ショー』のルーツ?)
大いなる愛

アウグスト・ディール演じるゲシュタポのヘルストロームが加わった席でのカード人物は、
 G・W・パブスト
 ブリギッテ・ヘルム
 キングコング
 ブリギッテ・ホルナイ
ブリギッテ・ヘルムは、フリッツ・ラング監督(彼もユダヤ人の為ハリウッドへ亡命)の『メトロポリス』で有名な女優、ヘルムはウーファと10年契約を結び、1935年結婚後安全なスイスへ移住して映画界から完全に引退しました。

メトロポリス

この『キングコング』は1933年RKO配給版で制作総指揮がセルズニック。
主演女優フェイ・レイが映画史的に初めてスクリーム・クイーンと呼ばれた映画としても語り草で、ヒトラーの大好きな映画だった事でも有名であります。

キングコング

ブリギッテ・ホルナイは、ナチ時代に表向きはゲッベルス掌握下のウーファで一番活躍した女優です。
実は多数のユダヤ人を亡命させ、反ナチ的な活動でゲシュタポに追われていたエーリケ・ケストナーを自らの屋敷に住ませ、偽名で映画脚本を書けるようにしていた反ナチ派レジスタンス的女優であり、後年トリュフォーがこのエピソードからインスパイアされ名作『終電車』を作ったのであります。

ブリギッテホルナイ

ヒコックス、ヘルストローム、ヒューゴのメキシカン・スタンドオフは、レオーネのマカロニ・ウェスタン『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』からの再オマージュですが、新時代を感じさせるメキシカン・スタンドオフで『レザボア・ドッグス』でオマージュした時よりも更に高次元のレベルに達しております。

ブリジットがバスターズに拷問されるシーン、アルドがブリジットの脚の銃痕に指を入れるのは、またまた『情け無用のジャンゴ』からのオマージュ。
この撮影日に脚フェチで有名なタラちゃんに、
ダイアンが「クエンティン!今日は興奮してるでしょ? あなたの大好きな脚の撮影日よ」
タラちゃんは怪訝そうな表情で否定したんですけど、実際本番が始まるとダイアンの脚ばかり撮って、顔は全く写してくれなかったみたいであります!
ダイアン曰く「噂は本当だったわけ!」


≪第5章≫
REVENGE OF THE GIANT FACE
  ~巨大な顔の復讐~



1942年の同名リメイク作、『キャット・ピープル』からデビッド・ボウイの唄うテーマ曲から始まる、最終章にふさわしいタラちゃんの選曲センスにはほんと脱帽!
これ劇場で聴いた瞬間鳥肌立ちました(タラちゃんにとって映画製作での一番の楽しみは、お気に入りの曲を選曲していく段階と語っております)。
キャットピープル

クラウス・キンスキーの娘ナータシャ・キンスキー主演で悲恋スリラーのリメイクがオリジナルに勝った名作で、ジョルジオ・モロダー編曲であります。
復讐の決意を固めるショシャナ、 円形窓から見えるのはブリジットの2枚目のフェイク映画ポスターであります。


劇場内ではゲッベルスがウーファ役者エミール・ヤニングスを褒めています。
ルビッチやムルナウらの監督作で世界的に評価を受けたヤニングスは、ハリウッドに進出して『肉体の道』で第1回アカデミー主演男優賞に輝きました。 その後ドイツに戻り、ナチに急接近しゲッベルス掌握下のウーファで数多くの映画に主演して、ゲッベルスから国家俳優の称号を与えられます。

ランダがブリジットらバスターズを見つけて、ブリジットのギプス脚に触れるシーンは、『ウエスタン』のヘンリー・フォンダとチャールズ・ブロンソンの決闘シーンのカメラワークからのオマージュ。

ランダがバスターズに1人ずつイタリア名を聞いていくシーンで、イーライ・ロスのアントニオ・マルゲリーティ、イタリアン・エクスプロイテーション監督で代表作はグラインドハウス:ホラーの『地獄の謝肉祭』、『幽霊屋敷の蛇淫』などで、アメリカ偽名はアンソニー・M・ドーソン(イタリアン・エクスプロイテーション監督&役者はグラインドハウス向けに、大抵アメリカ偽名を持っていました)。


このプレミアで上映される『国家の誇り』はイーライ・ロス監督の劇中劇で、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の歴史的名作『戦艦ポチョムキン』で階段から乳母車が落ちる伝説的なシーンのオマージュもしております。
国家の誇り

イーライ・ロスらが座席につくシーンでは、B級映画の帝王ロジャー・コーマンのグラインドハウス:バイカースプロイテーション『デビルズ・エンジェル』からファズ・ギターが唸るテーマが流れ、マルセルがスクリーンの裏へ回るシーンでは、エルマー・バーンスタインの『ズールー戦争』のテーマが流れます。
デビルズエンジェル

ランダがアルドとユティヴィッチを拉致して、米軍高官と電話で話す声の主は、ハーヴェイ・カイテルです。

続いて、ショシャナのいる映写室(映画好きにはたまらない聖域であります)へ、フレデリックが入るまでのシーンでは、戦争コメディの名作『戦略大作戦』からのテーマ「タイガー・タンク」が流れます。
戦略大作戦

私が本作で何度見ても泣けるショシャナが撃たれるシーンでは、セルジオ・ソリーマ監督の傑作、オリバー・リード&ファビオ・テスティ主演のグラインドハウス:イタリアン・クライム『非情の標的』から美しく感動的なモリコーネの「ウン・アミーコ(我が友)」が流れます。
このスコアは私のモリコーネベスト5に入ります。
非情の標的



このシーンは今までタラちゃんが敢えて外してきたストレートな演出の名シーンであります(ついに伝家の宝刀を抜きましたね)。
マルセルがタバコに火を付けてフィルムを焼くシーンでは、『戦争プロフェッショナル』からのメインテーマが流れます。

劇場内が混乱に陥り、ナチ高官が閉じ込められ、火に包まれ撃ち殺される壮絶なクライマックスシーンは、
『暁の七人』
『ザ・ボス/暗黒街の標的』
『戦争プロフェッショナル』

のオマージュが重複してオリジナルに昇華されています。
暁の七人
ザ・ボス/暗黒街の標的
戦争プロフェッショナル
ランダとアルドらが小雨降る森で話すシーンは、コーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』での処刑の森からのオマージュ。

アルドが視点を合わせずナチ兵士を撃ち殺すのは、コルブッチ監督のマカロニ・ウェスタン『ガンマン大連合』からのオマージュ。
ガンマン大連合

ラストのカメラアングルはまたまた『鮮血の美学』
「こいつは俺の最高傑作だぜ」
『イングロリアス・バスターズ』は私にとってタラちゃん史上の最高傑作であり、私のオールタイムベスト10に入る、オープニングからエンドロールまで、何から何まで全てが大好きな映画であります。


≪エンドロール≫

本作のテーマ曲にもなっているこの曲は、マルチェロ・マストロヤンニ 主演、パアロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟監督による革命歴史劇『アロンサンファン』から「ラッビア・エ・タランテッラ(恐水病と舞踏病)」、勿論エンニオ・モリコーネ!
アロンサンファン

本作はタラちゃん作品で最もモリコーネを使った映画でもあります。
まだまだ終わりではありません、ここが一番大事なクレジットと言っても過言ではないと思います。
今回のSPECIAL THANKS TOはマニア泣かせでたまりません。
一時停止でこの感動を堪能したいと思います。

エンツォ・G・カステラッリ
マギー・チャン
モンテ・ヘルマン
サミュエル・L・ジャクソン
スティーブ・ジョイナー
ハーヴェイ・カイテル
クロリス・リーチマン
ジョン・ミリアス
バリー・プライマス
イーライ・ロス
マイク・シンプソン
セルジオ・ソリーマ
ボー・スヴェンソン
トム・ティクワー

(順番通り映画人のみチョイスしました)

『イングロリアス・バスターズ』が完全オリジナルになった理由の1つとして、
「ナチが映画をプロパガンダとして利用したから、映画でナチに復讐したんだ」
とタラちゃんは語っています。
NAZI NIGNT

最後に『レザボア・ドッグス』から『イングロリアス・バスターズ』まで、全てのタラちゃん作品の編集を手がけてこられたサリー・メンケさんのご冥福を心からお祈りします。


  • 2012.07.07(Sat)
  • ラウの好きな映画







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